Long Story(SFC)-長い話-
揺籃の森のむこうへ -1-
「っ!」
―――激しい衝撃と暗闇が交錯した刹那ののち、あたしの目の前に広がった風景が突然変わった。
「……え…?」
動きを止めてあたしは周りを見渡す。草木が生い茂る森の中。それは変わらないのだが、目の前から誰一人消えた。
「ガウリイっ!?」
あたしは先ほどまで一緒に戦っていた旅の連れの名前を呼ぶ。が、返事はない。
声が届かないところまで移動して戦ってるとでもいうのだろうか。いや、そもそもあたしが戦ってたやつはどこに。
混乱と警戒心が増した。
――とある森に迷い込んだあたしとガウリイ。
たまたま純魔族にその森の中出会ってしまった。そこまではよくあることだと思うのでさておいて。
突然の鉢合わせに戦闘開始。人間と鳥の間に生物が存在するのならばそんなような―――妙な骨格を持った黒い物体は何匹にも小さく分裂してあたし達に襲いかかった。
「そっち頼むわガウリイ!」
「おうっ!」
言って左右へと大きく飛び、あたしは呪文を唱えてとき放つ。
「烈閃槍っ!」
術は一匹を倒すが他に変化なし。状況から考えて、おそらく核になる本体がいて、それを倒せばいいと思うのだがどうやらはずれのようである。
「せいあっ!」
ガウリイの剣技がくりひろげられる。何匹もが斬られ消えるが―――別のやつらがさらに空間を切って分裂する。キリがない。
分裂したのが本体だとしても、複数が同時に空間を切って移動されれば判別できるわけない。
一匹一匹はそう難しい相手じゃないのだが…量が多すぎる。
同時に全部を――しかも不意打ちで叩くような技をタイミングよく出さなければならないとなると―――そうあたしが考えてるところに目の前に一匹が空間を渡り突然現れた。
たまたま唱えていた呪文を完成させとき放つあたし。目の前に現れたそれは再度空間をゆがめて消えようとした。
しかしその時――――
ばちいっ!!!!
「!?」
大きな音がその空間に響きわたり、雷が走ったような衝撃が襲った。
その瞬間目の前が暗くなり――――今に至る。
今いる場所も森の中。しかし同じ森なのかは正直自信がない。
ガウリイがいないことを含めてもあまりに人気がなさすぎるし、木の位置やら日の入り方が少し異なる気がする。といっても、森の中なんてどこも同じようなもんだけれど。
「――――リナ?」
背後から気配が近づき、声がした。
馴染みすぎた気配。だから気づくのに遅れたが、さすがにその声に反応してあたしは振り向く。
「ガウリイ!」
よかった別の森だと思ったのは気のせいか―――と安心して彼を見たあたしは―――彼の姿に絶句した。
まず服装が違った。普段の鎧はなく猟師のような、わりと一般的な服装。
髪を結んでいた。丁寧に長い髪は編み込まれている。
そして、そして何より――――年老いていた。
十年以上は老けた顔立ちだった。
「…ガウリイ…?」
「リナ、なんだな」
震える声でそう言った彼に、あたしはこちらの疑問も言えずにただうなずく。
目の前の彼はこらえきれないと言ったようにあたしを抱きしめて何度もあたしの名前を呼んだ。