Long Story(SFC)-長い話-
揺籃の森のむこうへ -prologue-
「何、考えてるんだ?」
とある日。ガウリイに問われてあたしは振り向く。
気がつけばあたしの旅の連れのガウリイは後ろにいた。
のどかな街道。どうやらぼんやりとしているうちに一緒に歩いていたはずの彼より前を歩いてたらしい。
うん、と曖昧な返事をしてあたしは彼が追いつくのを待つために足を止める。
彼を見つめた。そんなあたしを見て、彼は眉をひそめて言葉を重ねる。
「この前からお前さん、なんか考え込んでるよな。ほら、なんか…よくわかんないのと戦ったあのとき」
「……」
鋭いなあ、と思う。
確かに、先日とある戦いをして、終えたときからあたしはずっととある感情にとらわれてる。
けれどそれをどうしてしまおうか―――ずっと考えてる。
もう限界にきていた。ガウリイにこうして気づかれるほどに。
―――――本当は―――口にするべきではないと思う。
多分、これは、あたしの中で一生眠らせておくべきこと。
今この目の前にいるひとが知ったら多分傷つく。あたしの誰よりも側にいてくれてる自称保護者。
あたしをずっと見ているひと。
けど、だから。誤魔化せない。
あたしを支配する感情―――目の前の人への罪悪感。離れた切なさ。
そして―――それでもあふれる激しい愛しさ。
「……好きなひとのこと、考えてた」
あたしが苦しくてこぼした言葉に、え、と聞き返すガウリイ。
彼の歩みが表情とともに止まった。
多分何事もなければ、幼いながらも穏やかな関係をこのひととずっと続けていたのだと思う。
ほかに心を奪うような相手もいなかったし、一番隣にいたいと、大事であると言うことが揺るぐはずなかったから。
けれど―――――あたし、リナ=インバースは――出会ってしまった。
以前ガウリイが冥王にさらわれて、人質にされた時と同じ―――もしかしたらそれ以上の衝撃。
今この瞬間も、会いたくて会いたくて仕方ないひと。
「すごく好きなひとのこと考えてたの」
はっきりと言葉を伝えて形にする。
―――あたしは目の前の彼の知らないところで先日激しい恋に落ちた。
もうある意味二度と会えない相手と。