Long Story(SFC)-長い話-
SAPPHIRE -7-
「あんたの目的は王の子供だろ?その女は関係ないはずだ。
俺の女に手ぇだしてもらっちゃ困る」
そう、黒ずくめに言う赤毛の男。
――――誰が、あなたの、よ――――
言いたかったのだけれどいきなり現れた両者に戸惑い声に出すまでには至らなかった。
―――予定外の、赤毛の男が現れたものの黒ずくめは少しも慌てたそぶりを見せない。
が、先ほどの『火炎球』で異変に誰もが気づいただろう。すぐに誰かが駆けつけるのは必然。
黒ずくめがぽつりと言う。
「間違ってはいない。が、今はひくしかないようだな」
冷淡にそう言ったと思うと―――
ひゅっ!
赤毛の男にいきなり小ナイフを私同様投げつけ去った。
「!」
がっ。
それを暗闇の中、手であっさりとうけとめる赤毛の男。
「……ほぉ。なんかややこしくなったみたいだな」
なんて事ないように、受け止めたナイフをくるくると回しながら私の側に来た。
「無事か?」
………。
「……どうした?」
「――――誰が、あなたの女なの」
さっき言えなかった言葉を口にする。
動揺を隠してじと目で睨み付けると、うっ、とひるむ赤毛。
―――――いや。
遠目で先ほどは気づかなかったが――――
「………髪……?」
気づいた瞬間、思わずぽつりと口にした。
赤くない。
もちろん暗いのも手伝ってだろうけれども―――その髪の色は黒かった。
「ああ。あんたが嫌ってたから」
自分の髪をいじくって照れたようにそう言った。
染めたと言うのか。わざわざ。
「……何をしに、来たの」
どうして、と訊いたらまたぼけた言葉で返すと思い、訊き方をそうした。
すると苦笑して。
「暗殺者じゃなく、赤毛でもなかったら、嫌われないですむだろ?
―――――廃業するって言いに来たんだがな。ところがこれだ。
――――やっかいなことになったな」
「――――」
……どうして。
「何があった!?」
遅いながら警備仲間がひるみながらやってきた。
「っ!侵入者か!?」
「あー。いや。これは。」
ぱたぱたと手をふる元赤毛。
――先ほどの爆発。
見なれない顔。
これで怪しくないと言っても誰も信じないだろう。
助けを求めるように私の顔を見る。
………。
「―――待って。侵入者じゃあないわ」
わたしは警備仲間に堂々と言った。
「!」
駆けつけた連中を見渡してわたしは続けた。
「私の知人よ。忘れ物を渡しに来てくれただけ。
――――それぞれ警備を続けて」
「しかしさっきの爆発は……!」
「別の輩よ。暗殺者が現れたの。
そこをたまたまきた彼が追い返しただけ」
少なくとも嘘はあまり、ついていない。
納得したのかどうなのか、少しおろおろしながらも警備仲間は少しずつ元いた場所に散っていった。
最後に残るのは、元赤毛と―――私のみ。
「悪ぃな」
「……さっきの火炎球で助けられたのは確かだからその借りよ」
嬉しそうに言う彼に私は水を差すように冷たくそう言った。
気がつけば、ナイフをどこかに隠したようで、持っていない。
まだ信用はできない。
けれど。
少しだけ信じてもいい気が―――してきていた。