Long Story(SFC)-長い話-
SAPPHIRE -6-
『黒幕は、モルダ=ティス=コランディア王妃なんだよ。
殺された子供達は―――公表はされていないものの全員コランディア王の落とし胤だ』
暗殺者の言う事など聞かないと思っていたものの。
少しずつ見えてくる裏がその言葉と繋がってきていて、信じてしまってくる、自分が少し恐い。
まだ他にも色んな推理は出来る。
王妃でなく、他の国の権力者の仕業だ―――その考え方だってある。
そう、思っていた。
思いたかったのかも―――しれない。
けれど。
「………」
くしゃり、と私は手のひらの紙切れを手でつぶす様に折りたたんで服の中に仕舞った。
先ほど―――皇子が手を握る際、密かに私に握らせたものだった。
彼が―――どう言う気持ちで私にこれを渡したのかはわからないけれど。
ヒュオオオオオオ………
風が強く吹き始めた。
城の外を護る護衛達と相談し、私は、一番人の出入りがないものの皇子の部屋からは遠い位置を一人で護る事にした。
誰もがあまり近づきたがらず、護衛もその場所は希望者はほとんどいなかった場所を志願した。
近づきたがらないのは―――簡単だった。
唯一殺された城の傭兵警備員が死体で見つかった場所だったからだ。
彼そのものは当時はこんなに警備も厳しくなかったので、
1ヶ所にとどまって警備するのではなく交代で城の周りを巡回していてたそうなのだから、
たまたまそこで殺されたと言うだけでその場所にこだわる必要はないのだけれど気分の良いものではない。
そして、さっきも言った様に皇子の部屋からは遠い場所なのでここから皇子を狙うには、
皇子の部屋に行くまでに何人もの護衛に会いやすくリスクが大きいから有り得ない、と言う意見もあってだった。
一見矛盾しているようにも思えるけれども、狙いが皇子、と決めつけている以上見解がそうなってしまったのは別におかしいことではないことだ。
他の男の魔道士や剣士が物好きな、と言う目で志願した私を見ていた。
しかし。私がここを選んだ理由は。
皇子の部屋からは遠いものの、王妃の寝室に――1番近い場所であることを知っていたからだった。
王妃は皇子が生まれたのをきっかけに王とは寝室を別にし、一人で眠っていると、城の傭兵から聞いた。
その事実もあの暗殺者の言葉と繋がる。
王妃の寝室の側に転がっていた―――死体。
『さあな。一目惚れ、ってやつかな。あんたの目に、惚れた』
軽い調子で言う赤毛の暗殺者。
彼の目的は―――王妃。
ならばここで張っていれば――――戦いざるを得ない状況になることは想像に固くない。
もし―――事が事実だとしても。やはり嘘だとしても。
どちらにしろそれは免れない。
「―――?」
風がやみ静寂の中――何か違和感を突如感じ、辺りを見渡した。
特に気配はない。が。
ひゅんっ!
迫り来る何かに私は勘でそれをよけた。
小ナイフ。
「ほぉ……よけたか…なかなかやるな」
気がつけば―――黒ずくめの男が城壁の上に現れていた。
声からすると―――昼間の赤毛の暗殺者ではなさそうだった。
呪文を唱えようとするとその黒ずくめは言った。
「無駄な事を。魔術を放ったところで騒ぎで人が集まる前に―――いや、魔術など使う暇も与えず殺してやる」
ぞくり。
赤毛の暗殺者とは全く違い殺気のプレッシャーを感じる。
かなり―――できる。
じゃっ!!
動いたと思うとあっという間にふところに来る暗殺者。
早い!
ぎんっ!
呪文を中断し、常備している剣でなんとか受け止め、その反動で後ろに下がる。
奴の言う通り――唱える余裕が――。
「火炎球!」
掛け声と同時に火の玉がどこからか目の前の暗殺者に向かい飛んできた。が、それをよける。
「―――!?」
今の攻撃は私がやったものではない。と、すると―――?
「狙う相手が違うんじゃねえか?」
昼間の赤毛の暗殺者が―――黒ずくめの姿ではなく、昼間の傭兵風のままの姿で現れて――。
目の前の別の黒ずくめにそう言った。