Long Story(SFC)-長い話-

SAPPHIRE -21-



「気がついたか?ミリーナ」



目を覚ますとそこはベッドの上で。

心配そうにルークが私を覗き込んでいた。



「………」

無言のまま私は辺りを見渡す。

様子から見ると城の中だろうか。



 

―――――!



「皇子は」

私は起きあがりながらルークに訊ねる。



……思い出した。

王妃に首を締められ、酸素不足のためか、私は――――



「無事だよ。ついでに王妃も」

肩をすくめてあんまりそのことが良くなさそうに言うルークに私は再度安心した。



「しかし何でまた城なんかに来たんだ、ミリーナ」

「……あなたこそ、どうして城にいるの」

言い返すとそれには痛い所をまたつかれたと言った顔をする。

頬をかきながら、

「いや…だからよ、これ以上俺のミリーナが狙われない様に…釘さそうと…」

「あなたのじゃあありません」

きっちり訂正を加えてから、私は言葉を続けた。



「聴いた筈よ。あなたも。もはや子供はどうでもいい、と。

子供と同様に受けた王妃の命令を無視してクルンツは私を狙う事を決めたのよ」

自分が満足に、簡単には倒せなかったルベウスの知り合いだから――――



「王妃をどうにかしても私が狙われるのは変わりないわ。

なのに王妃を狙うのならあなたは暗殺者をきちんと廃業できてないことになる」

少し咎める様に言うと彼は黙り込んだ。

 



―――無意味な赤は、要らない。

 



「…もう、信用しないか?やっぱり俺を」

少し弱気になった様に言うルークに、私は少しだけ柔らかく答えた。少し、だけ。

「……あなたが本当に信用できない人物なら、王妃は私が倒れているうちに殺されているでしょうね」

「……!」



そして。

あの時皇子が自害しようとするのを、状況がわかってなかったにしろ、止めなかっただろう。

いつのまにか信用させられる。――この人は。何故か。

言葉には、しないけれど。したらきっとまた思いあがるから。

 



喜んでいいのかどうなのかと複雑な顔をしながらしばらく黙り込んだ後、ルークが思い出した様な顔をする。

ゆっくりと口を開いた。

「…なあ、そう言えば…訊いてもいいか?」

「…何をですか」

「―――ルベウス=クラッシェッド―――」



ぴくり。



私を真正面から見ながらルベウスの名前を出してきた彼に少し動揺した。



「あの時この名前が出たときの――自ら出したときのミリーナの反応はおかしかった。

いや、そもそもクルンツの名前が出てからの方が動揺してたけど…。

…誰なんだ?もう勝手な真似はしないから教えてくれないか?」

 



真面目に言う彼に私は言葉を考えた。

何と答えればいいのだろうか―――彼のことを。

 

 



「……私の―――家族――――でした」

静かにそう答える。

色々考えた末結局導かれた自分の回答にああそうか、と自分で納得してしまった。

 

 



多分一番適切な答え。

誰よりも大切な、『家族』だった。

血は繋がってはいないし一緒に暮らしていたわけでもないけれど―――

 



 

「あいつに―――殺されたのか」

私は黙ってゆっくりとうなづきベッドから立ちあがる。

ベットに寝かせる際ルークか誰かが外したのだろう、傍においてあった鎧を着る。



「どこに行くんだ?」

「…皇子の所に」

「会えねーと思うぞ。まだ城内騒然としてる。王妃も同様だ。それぞれ別の部屋で治療を受けているし―――それに」

「それにその前に――話が訊きたいのだ。君達に」



ルークの言葉の後を続けたのはその時頃合を見計らったらしく部屋に入って来たコランディア王だった。

家族が起こした事に衝撃はやはり大きかったらしく、いきなり老け込んだ様に見えた。

 



私は王を見て静かに一礼した。