Long Story(SFC)-長い話-
SAPPHIRE -18-
「何故―――貴女がここにいるのです?」
王妃はもう一度私に訊いた。
私は2度目の問いに我に返り――――言葉を紡いだ。
「……騒ぎを聞いて、王妃を護りに来ました――――」
嘘ではない。けれど信じてもらえるのだろうか。―――この状況で。
「……護る?」
王妃がゆっくりと私に向かって歩み寄った。
私はまだ動かなかった。
どおん!!
外で爆音がした。ゴーレムを魔道士が倒した音だろうか。
「皇子でも王でもなく――――私を?」
嘲笑う様な表情を浮かべ、王妃は傍に来た。
――――どうして。
どうしてこんなに赤いのだろうか。
――――何かが。
「……王妃の命を狙っている者がいるとの情報が私の元に届きました。ですから……」
だんっ!!
私が静かに話している途中で、王妃は突然私の首を締め、壁に押しつけた。
…………!!
「命を狙っている?」
そう低い声で言う王妃は静かな狂気と憎しみの目で溢れていた。
首を締める力は強く、緩まない。
声が出せない。
「――――それは貴女自身でしょう?」
「………っ」
間近で鬼気迫る表情でそう王妃に言われ私は反論しようとした。
違う。
そう言いたいけれど言葉にならなかった。必死に抵抗しているのにふりほどけない。どこにこんな力があるのだろうか。
油断していたわけではけしてないのに―――意識を失わないのがやっとの位。
どうして。
どうしてこんなにこのひとは――――激しく。
赤く。
みしり……と骨がきしみを上げた気がする。
王妃は吐き捨てる様に私に言った。
「どこまでわたしを馬鹿にすれば気が済むのっ……欲しいのは王の寵愛!?
それとも自分の子供への王位継承権!?」
そう言う王妃は私を見ているものの違うものを見ているようだった。
いや。実際見ているのだろうか?私には子供はいないのだし。
―――こんな時でも妙に落ちついた自分がいた。
「魔法で脅されても城も息子もあの人も…!!みんな私のもの。
貴女が何度甦っても……!!また殺せば済む事よっ……」
意識が遠のく。
殺される。
王妃の言葉に疑問は持つもののそんなことを考える余裕はなかった。
もう駄目だ―――そう思った時不意にその手が緩んだ。
私は解放され、咳き込みながらその場にしゃがみこむ。
苦しく、眩暈がしたもののなんとか気を持ち、王妃の方を見る。
「………っ」
私は声が出せなかった。
首を締められていたせいだからではない。目の前の光景が信じられなかった。
王妃が私を解放した理由がわかった―――
よろめく王妃。
脇に刺さる剣。
赤黒いものが王妃から吹き出して―――
「な……!?」
王妃は驚愕の声でその剣を持つものを見た。
―――いつのまにいたのか。
最初はルークだと思った。王妃を刺すもの。けれどそれは。
「皇子……!!」
王妃は脇に刺さる剣をつかみながらその剣の柄を持つ自分の息子の事を、呼んだ。