Long Story(SFC)-長い話-

SAPPHIRE -17-



ドォン!!



「!」

誰もが一斉に爆音の方に振り向いた。



 

 

「緊急の用事です。王妃に会わせて下さい」

この時間に無駄だとはわかっていたものの敵だと見なされるのもやっかいなので、一応城の入り口で顔見知りの傭兵にそう言った所で城の敷地内で爆音が響いた。



「なんだ!?今のは!?」

「通して下さい。おそらく―――王妃が狙われています」

「何!?」

突然のことに訳がわからない、と言ったような表情の傭兵。

それは私が入るのを否定も肯定もできないようで、私はそのまま彼の前を通って行った。

 

 



爆音は庭からのようだった。

走って行って見れば元仲間の雇われ傭兵やら魔道士が複数のゴーレムを相手に戦っていた。

ゴーレムのみ。ルークの姿はない。

――――陽動。



そのゴーレムは彼らに任せて、ばたばたしている中私は城の中に入る。

つい先日まで出入りしていたせいもあって私が城の中にいても誰も不審に思わない様だった。―――思っている余裕もないのかもしれないけれども。

焦る心を抑えながら彼の姿を、王妃を探す。



 

―――最初に会った時彼は皇子の部屋に間違えて入ってきていた。

そして普通に話をしていた時も私は王妃が普段どこにいるか、どこが寝室かはルークに語らなかった。

語る必要がなかったから。



だからルークは王妃のいる場所がよくわかっていないし調べられていないのだと思う。

おそらくゴーレムで外が騒いでいる間に王妃を探すつもりなのだろう。

だとしたら王妃のいる可能性の高い場所がわかる私が先回りできる可能性は充分にある。



 

 

 

…赤に染まってはいけない。

――――王妃も、ルークも。

クルンツによって赤に染められるのはもう彼で終わらせなければいけない。

だから私は―――クルンツを倒そうと――――誓った。



 

 

コンコンッ!



王妃の部屋に着き、こんな時でも一応相手を考え、ドアを叩いてから私は普通のものより若干重い扉を開けた。

窓際に―――王妃は一人立っていた。外の騒ぎを見ていたのだろう。

私にすぐに気づき私の方を見た。

私はそれに一瞬戸惑う。

その表情は驚いたものではなくてどこか納得したような、知っていたような―――そんな表情だったのだ。



――――あの時と――――まるで同じように。



「何故―――貴女がここにいるのです?」

低い声で王妃は表情とはうらはらにそう、私に問いた。

私は言葉に詰まる。

 



 

 

 

同じ過ぎる。

その言葉は。

何もかも同じで。

赤く。



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「何故君がここにいるんだい?」

彼は―――。

私が家に行き、執事を眠らせ、無理やり彼のいる部屋に押しかけると。

驚きとは違う表情で私を見て問いた。

―――ギウスとは違い、服についた血に驚きもしない様に。



「……どうしてみんなを殺したの」

かすれた声で、私は言った。

すると。

彼はおかしそうに、自分の赤い髪をかきあげながら嘲笑う。

彼―――クロムは。



「みんな?みんなって?何の事だい?」



その言葉に、目を閉じて。

もう一度言葉を紡ぐ。



「どうして―――ルベウスを殺したの」



沈黙。

その沈黙は長かったのか短かったのか、もう、思い出せない。



 

「どうして僕が――ルベウスを殺したと?」

沈黙を破ったのはクロムだった。

その言葉はどこか強気で。

私は一生懸命、すぐには出てこない言葉を紡いで、答える。



「………ルベウスの弟のギウスは生きていた。

彼は全くルベウスの異変に気づかなかった。

ルベウスが研究室にいたから。

――――ギウスに気づかれずに研究室のルベウスを殺せるのは、ルベウスが普段研究室にいるのを知っていて、直行できる人だけ。

そして、知っているのは、私と――――おそらく以前のルベウスの言動からしてあなただけだわ」



亡くなった評議長ですら前、家に現れたと言っていた。

意外と、ルベウスが研究室にばかり篭っている事実は周りに知られていなかった。

元々研究室があるのも知らない人も多いかもしれない。

知らない誰もが、家か店に行く。そしてギウスが呼びに行く。

ルベウスは広く色んな人と付き合っていたもののけして研究室をおおっぴらに言うような馬鹿なことはしなかった。

だからそれが当たり前なのだ。なのに。



「……それに協会に転がる死体に――あなたはいなかった。

町の協会で大きな立場にある人で生き残っているのが―――あなたしかいないのなら疑いの余地は無いわ」



自分で言葉にしていて空想ごとのような気がした。

協会のことから現在に至ってまでの事実、全て。

言葉にする事で空想ごとになって欲しかった。



くっくっくっくっ……

彼はまた嘲笑う。

私を見たその目は、狂気の色を持っていた。



「…ああそうさ、暗殺者のクルンツって奴に頼んで殺してやったんだ!」

クロムはそう、高らかに宣言するように―――私に言った。