Long Story(SFC)-長い話-
MEMORANDUM -13-
「魔族に……なった、だと……!?」
「簡単なのよ。ゼラス様の手にかかれば。…もっともあなた達のせいでゼラス様自身は表立って動けないけれど」
話の見えない会話をゼルと、目の前のあたしと同じ姿が、する。
「あたし達リナコピーの本来の目的をあなたなら知っているでしょう?ゼルガディス?」
あたしをあくまで見たまま彼女は言う。ゼルもあたしを見た。そして無言のまま彼女に向き直る。
何?
「目的が果たせないコピーは用がなくなる。
生きている資格なんてないの。
でもだったら生きなければいい。
人間を辞めればいい――――簡単な答えだわ」
「………」
ゼルがじりじりと剣を構えて様子をうかがう。
彼女は何もしていないのに―――まだただ話しているだけなのに、全く隙が見えない。
それはあたしにも感じられた。
「最初あなた達が来たのがわかったとき驚いたわ。
あたしの指令はあくまでも『写本を処分する』ことだから。
あなたの前に来た人間は、最後の結界を破る前に逃げ帰るし。無理を強いれば封印を解く前にこときれるし。
誰か解いてくれやしないか―――そう思ってずっと待っていた。
そうしたら――同じ顔が、のこのことやってきた。
まさか会えるとは思ってなかったけれどね」
………あ………!
―――彼女の言葉で。
部分的に甦る。
思い出す。
フラッシュバック。
「まさか会えるとは思ってなかったわ……」
「……っどういうこと!?っ……」
そのあと歪む世界。
頭が痛い。
出なきゃ。
ここから出なきゃ――――
最後の封印を解いちゃいけない。
わからないけど、彼女の思惑にはまっちゃいけない―――
「この程度のしっぺ返しに反応する程度?」
――とにかく逃げるあたしに後ろから響く声――
侮蔑の声。
「そのまま結界にやられて朽ちたらいいわ。そんな状態のコピーに興味はないの」
洞窟に響く声。
「あなたが来たのなら、他にも解いてくれる人はいくらでも現れてくれるから」
――――――!
そう……そうだ。
あたしはここで彼女に会った。
そして体が重くなって……
無理矢理外に出て。
―――それじゃああたしは。
それを忘れてまた彼女の思惑にはまりにきた―――
ゼルを巻きこんでまで。
彼女はこれを予想していたのかもしれない。
あたしに何かあった場所なら、旅の連れのゼルが来る可能性が充分にある―――
彼女はあたしとゼルが一緒に旅をしていたことを知っていたのだろう。
ごめん。
ごめんごめんごめん。
――結局あたしは―――。
「氷の矢!」
ゼルが術を放ち、すぐさま彼女に剣を振りかざす。
が彼女も持っていた剣でそれを相手にした。
「リナのコピーだから魔法だけで剣の腕がないとでも思った?
残念ながら剣術もオリジナル並には使えるのよ」
ギイン!
しかしゼルの剣先が彼女の髪のひとふさを凪ぐ。
慌てて後ろに下がる彼女。
「リナ並と言ったがリナが強くなったのはガウリイの影響だ。
……それにどちらにしろ俺より剣術に長けているとは言えなかったはずだ」
ガウリイ。
新しい名前が出てくる。
誰なのかを考える余裕は既にないけれど。
「なるほど、ね」
相変わらずの強気な余裕の表情。けれど憎しみを持つ冷たい印象の姿。
その姿が掻き消える。
なっ!?
「レナ!」
ゼルの声と、身体に走る冷たいものに反応し、あたしは横に飛ぶ。
刹那その場所に衝撃破。
そんな。
「……空間を渡った……!?」
魔族になった、と言った彼女の言葉を思い出す。
あたしが元いた位置の後ろに彼女は姿を現していた。