「ほんと。リナもガウリイさんも変わってないわよね」 何故か呆れた様に、久々に再会したアメリアは溜め息混じりにそう言った。 サイラーグの外れにある宿屋での夜の事である。町復興の規模とその外れという位置の割には、こじゃれていてサービスも行き届いていた。 「何よ。悪い?」 少しだけ睨む様に彼女を見つめてあたしは言う。 彼女と別れたのは一年…いや、二年とちょっと前か。 冥王の一件から今日まで。結構いろんなことがあって、これでも自分としては少しは成長してるつもりなのだが。 いや、まあ確かに相変わらずの旅暮らしだし、大して何が変わったかと言われると言葉につまるけれど。 「だっていい加減何かないの?ガウリイさんと」 ……そーゆー意味か。 「ないわね」 きっぱしとあたしは答えた。 二人でまた魔王を滅ぼした。 ずっと二人で旅をしてきた。 …あたしの郷里にも行った。実家で過ごした。 だからと言ってあたし達の間に何か変化があったか、というと全く。アメリアと前旅したときと同じ。自称保護者だし、こっちは被保護者。旅の連れ。相棒。 ……何か変化が起こらないか、と一回も思わなかったわけではない。むしろ期待してしまった時もある。言わずもがなな郷里に行った時である。 が、本気で彼はブドウや、見慣れない場所やら――あたしの郷里なわけだけど――を物珍しそうに見て堪能していただけ。そしていつも通りの優しい笑みを見せるだけ。 ――それに、ああ、変わる必要もないのかもしれないとも思い始めた。 変える必要がない。 そもそも一体何を変えると言うんだろうと思うと特に思い付かなくて。 それじゃあ望むものは、と言うと、ただ単に一緒にいること。 何もやはり変わらない。 「多分これからも何もないわよ」 性別が違わなければな、とか時々最近は思う。きっと彼が女だったりあたしが男だったりすれば、そんな煩わしく理屈で未来を考える必要がないのだろうに。 そう思えるほど、今ではあまりにも近すぎる。変わるのならば、きっとずっと前のタイミングだった。 まあねえ、とアメリアがさらにためいき。 「なにかあるなら今ごろ、リナの部屋行ったらガウリイさんがいた、位あってもいいわよね」 「……あんたねえ」 じと目でにらみ付けながらも、久しぶりに誰かからそう言った話をもちかけられ、再認識に気恥ずかしくて赤面になるのを必死に抑えた。 アメリアが自分の部屋に帰ってしばしののち、再度あたしの部屋へのノックが響いて、あたしは眉をひそめつつ扉を開ける。 アメリアが何か忘れ物でもしたのかと思いきや。 「よぉ」 その気軽な笑顔に今度はあたしが溜め息ひとつ。 「…タイミング外れてて良かったわ」 続き等が気になる方は是非本のほうで。 |