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「火炎球!」 寒く、白く重い空の下。あたしは震えながらも術を目の前のものに放つ。 たくさんの子供の洋服やら遊び道具やら。火炎球のおかげで勢いよく燃えて行く。 これらを灰になるまで全て焼して処分して欲しい。 ディート、というこの小さな村に来て、単独行動をとっていたあたしが受けた、あまりに簡単な依頼だった。 「でも、もったいない」 肩をすくめてあたしは言う。 隣りにいた依頼者のレイラさんに。 多分まだ二十代だろう。生まれも育ちもこの村だ、という彼女は間違いなく美人なのだが、どこか疲れた雰囲気をもっていて、それが魅力を半減している。 金髪の腰まで伸ばした髪が冷たい空気で舞ってる。 「誰かにあげるなり、売るなり。使わなくなったならそうした方がいいのに」 「この村の昔からのしきたりなんです。それはできません」 村で術が使える人がいればそちらに頼めたんですがと、どことなく硬い声で言い、あたしはふうん、とだけそれに返事をした。 古くあまり他と交流のない村。 普通の観光の旅なら用なんてないであろうそういった場所はもっぱらあたしたちの目的地となっている。 あたし達。リナ=インバースのコピーである、あたしと、ゼルの。 ********************************************** とある山奥の村に、合成獣の研究者がいる―――。 その世界でもあまり知られてはいなかったが、特にロック・ゴーレムと何かの生物を掛合わせたり組織を変化させる研究に長けていた、と言う話を人伝の人伝で耳にした。 ゼルの身体も、ロック・ゴーレムの組織が混ざっている。 「全てをいきなり取除くのは不可能かもしれないが、一つずつ取除くことは可能かもしれん」 その可能性を思い立ち、その研究者に会うことにしたのだ。 ゼルの言うとおり、もしその研究者が、合成獣を元に戻すことはできないが、ロック・ゴーレムの組織を取除くのはできなくもない、とかなら、彼の中で人間でない組織はブロウ・デーモンのものだけになる。 かなり通常の人間に近くなるだろうし、その理論が通れば、今度はブロウ・デーモンの合成獣に詳しい人間を探せばいいことになる。 村に着いて、別行動をとっている時にレイラさんに出会った。 心当たりならあるから、代わりに魔道士ならすぐ終わる簡単な依頼を受けてくれ、と言われて今に至る。 本当に簡単で、まあ、魔道士に頼るなよゴミ処分なんて、とも思ったのだけど、依頼料がかなりいい金額だったのと、心当たりと言うその言葉を信じて受けた。 村のしきたり、とか結構変わった習慣には今までの町や村でも出会ってきたんで特に気にはならなかった。 続き等が気になる方は是非本のほうで。 |