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「リナ」 あたしは目の前の彼女に声をかける。 とある日の夜。 眠れなくて何か口にしようと服に着替えマントを羽織って宿の1階に降りると、同じ顔の人間が帰ってきたところだった。 リナ=インバース。 あたしのオリジナル。 あたしは彼女のコピー。 あたし達はそれぞればらばらに旅をしていた。 たまたま目的地が一緒で再会したのが昨日のことだ。 折角だからそこまで一緒に旅をしよう、と言いだしたのは他でもなく彼女だった。 あたしは戸惑いつつもそれを承諾した。 戸惑ったのは彼女と旅をした事はなかったからとか、彼女の横にいる金髪の彼とあまり関わりたくないとか、色々な理由があったからだけれどそれは表に出さない。 表に出さないとしたなら断る理由なんてなかった。 「どこか出てたの?」 あたしは外を見ながら訊ねる。 ショルダーガードとマントをつけているあたり、ただ外の空気を吸うため宿の外に出た、なんて様子ではない。 今は真夜中、とまでは言わないけれどだいぶ夜も更けていた。 「そ。眠れなかったから」 「盗賊いぢめ?」 だったらあたしも行きたかったとばかりに言ってみる。 しかし彼女は首を横に振る。 「その辺の酒場で軽く呑んできただけよ。ブランデーを」 え、と声を漏らすあたしをよそに彼女はあたしとすれ違うように階段に向かう。 「呑みに行ったりするの?ひとりで」 ちょっと意外な行動にあたしは驚いて思わず訊く。 呑んだ中身も、ブランデーと言うのがあまりぴんとこなかった。 多分自分が呑まない種類のお酒だからだ。 元々あたしはお酒にそんなに強くない。 彼女ももちろんそのはずだった。 「時々、ね」 足を止めて少しだけ笑んで答えるリナ。 「まああんまし強いほうじゃないから呑むって言ったってたかがしれてるけど。 でも結構色々呑んでるうちに昔不味いなと思ってたのとか美味しいとか思えるもんよ。その辺にいた男達に教えてもらったりもするけれど」 そう言う彼女の頬は少しだけ赤みがかっている。 そういうもんなんだろうか。 自分が強くないと知っているのもあるけれど、どうもお酒の味にあたしは慣れない。 とても甘くてジュースにしか思えないのしか呑まない。 それに見知らぬ男達に混じって、言葉を交わして、なんて考えられない。 どうして一人で呑みにいくんだろうか。 ふと、宿の扉の方を向いても彼女の連れであるガウリイは現れない。 あたしがその疑問を口にする前に、リナが言葉を続けた。 「ガウリイには黙っててね。多分、盗賊いぢめに行った、と思ってるはずだから」 ――――え? 「……なんで?」 訊くと少しだけ困った表情のリナ。けれどあたしの顔を見るとどこか懐かしいものを見る様なまなざしに変わる。 リナが口を再び開いた。 「彼の中で、あたしはそう言う所に出かける人間じゃないから」 続き等が気になる方は是非本のほうで。 |