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―――漆黒の闇。 夜もかなり更けたところで定期的な呼吸音が部屋に響く。 明かりを消した宿屋の部屋の一室。 あたしはもぞもぞと毛布を被り直しながら、その音の原因である隣を見た。 見た先ではあたしの自称保護者が本当に気持ちよさそうに寝ていた。 ……と言うと誤解を招きそうな発言なのであらかじめ述べておくと、けして色気のある場面ではない。 二人で宿で同じ部屋、と言うとまさにそーゆー想像をされがちなのだけれどはっきし言って野宿と変わらない。 たまたま宿屋の部屋数が少なく二部屋取れなかった為に起きた状況なのである。長らく旅をしているとこーゆー事もまれにある。 お互い野宿よりはましだし、変わらないしと、あっさりその状況を受けいれる。 いや、あっさりとしているのは彼だけかもしれない。あたしも別に気にしてはいない、といつも通りを装うのだけれどそれはあくまで形だけだったりする。 その証拠に、なかなか寝つけない。 あたしはため息をついて上半身を起きあがらせた。 環境が慣れない、とかそう言う問題ではない。枕が変わったから眠れないだの、人がいるから眠れないだの言ってたら旅はつとまらない。 多分、ただの旅の連れ相手なら特に問題なく眠れるのに。眠れたのに。 あたしが起きあがった微かな音にも反応することなくガウリイはすやすやと眠る。本当に熟睡しているようだ。 あたしはもう十八で、彼と出会ってから三年は経っている。 けれど年を取っていったって彼が自称保護者を名乗るのは変わらなくて。 子供扱いも変わらない。きっと彼の見るあたしは変わらず子供なのだろう。 彼にとってはそれでいいのかもしれないけれど、実際は少しは成長しているあたしとしては困る。 何より。自分の彼に対する感情が、保護者に対するものでもただの旅の連れに対するものでもないことをあたしはいつだか不意に気付いてしまった。 そうっと自分のベッドに腰掛けたまま彼の眠る姿を眺める。 そして睨みつける。 ―――――なんでこの男はこんなに簡単に眠れるんだ。 理由はわかってる。 だから悔しい。 そりゃ確かに出会った頃からまれにあった状況だし。子供扱いしてる相手が同室だからって彼にとってはどうってことないだろう。あたしだってひと昔前まではそうだったはずなのだ。 別に何かを望んでたり求めたいわけじゃない。万が一あってもきっと困る。 ただ少しは。少しくらいはあたし同様に戸惑うとか寝つきが悪いとか気にしてくれてもいい気がする、と思うのはやはり今のあたしのわがままだろうか。 はっきし言ってそう感じてからは、気付いてしまってからは野宿の方がまだあたしはましに眠れる気がする。密閉された空間に二人、と言うのとは違うから。 ああもぉ。 毎回毎回最近こーゆー時に意識している自分がバカみたいなのはわかってる。わかってるのだけれど。 それに多分普通なら立場が逆だ。意識するなら男側だと思う、こーゆー場合。 ―――気付かなければ、よかったのに。何にも。そうしたら。 だんだんとむかむかした感情が沸いてきた。多分眠れないのはどきどきとかそう言う感覚よりこれのが大きい為。 今日は特に気持ちよさそうに眠っている。多分ここの宿屋の設備がよくてベッドの硬さとか毛布の柔らかさのレベルが一般より高いせい。あたしだってここんとこあまり良い睡眠環境に恵まれてないから早く眠りたい。眠らなくてもいいと思うんだったら着替えて盗賊いぢめにでも出てる―――ってさすがにそれは彼にばれそうだけど。 あたしはなんとなくベッドから腰を浮かせて、彼の傍らに寄ってみた。 後半はカットされてます。 続きや他の話が気になる方は是非本のほうで。 |