初夏のある晴れた日だった。 ―――旅すがら、たまたま歩いた先に湖があった。 「へえ。こんなとこあるんだなー」 「ほんと」 何にもない森の中にあったせいか、思わずほっとした声にお互いなってしまう。 休もうか、とあたし達はその辺に腰を下ろす。きらきらと日の光をあびて輝く湖を眺めて一息ついた。 「暑いし。水気持ちよさそうよね」 「入ってみるか?」 言われてしばし考える。 「足だけ」 言ってあたしはブーツを脱ぐ。水につけてみる。気持ちいい。 子供でもないんで軽くぱちゃぱちゃと足をばたつかせるにとどめて遊ぶ。透き通ってて綺麗な水。魚いないかな。 「あ、魚」 思ってるそばからガウリイが言った。 「え、どこ?」 「あそこ。ほら。今光った」 彼も遅れてブーツを脱ぎ足を水面に浸す。ひとさし指で一点を指し示した。光ってよく見えない。でもそちらに寄ってみる。 小さな魚が確かに何匹を群れをなしていた。近づくあたしに驚いてばらばらに散り逃げる。あー、と自然とあたしも彼も二人同時に声を漏らした。 「捕まえる気なら一気にやらないと駄目だろ」 「あんなに小さいのとは思わなかったのよ。よく、見えなかったし」 あれじゃ捕まえられても食べるわけにもいかないしすぐ逃がしていたから結果は同じだけど。 もともと小さな魚、というより稚魚のようだったから尚更だ。捕るなら大人。 「よし、ちょっと他にももっとでかい魚探してみよっかな」 腰に手を当てて張り切るあたし。ちょっと小腹が空いたとも言う。ちょっとだけだけど。 水は暑さを薄れさせ気持ちよさを生む。その感覚は当たり前になり、そして時が過ぎれば冷たい、と震えを感じてくる。 大きな魚を手で捕まえた時それが訪れてあたしは少しだけ身体を震わせた。ちょっと夢中になりすぎていた。 「そろそろ、これ持って先の町へ―――」 あたしは何を思うでもなく振り向いた。 ガウリイのいる方向にだ。体はそのまま、手は魚のしっぽを掴んだまま。顔だけ。そしてあたしは動きを止めた。 無意識に息を呑んでいた。 ―――彼はあたしを見つめていた。 じっと、ただ。眺望。近くにいるはずなのに。見るというより眺める。眺めてる。 その表情はいとしさに溢れた表情。そのはずだ。そう見える。 ――――なのに、どこか。 「リナ?」 硬直していたあたしはガウリイに名前を呼ばれ怪訝がられることでそれから抜け出す。 苦笑したように問いを投げかけた。 「……あ。ごめん。えっと。なんかついてる?あたしに」 言うと、え、と逆に驚く彼。そしてしばしの沈黙の後、頬を掻いて笑う。 「お前さんに、みとれてた」 照れたように。 あたしはその回答に、ばかね、と同じように少しだけ照れて言って返す。 表向き。うまく笑う。 ―――けれど違和感は残った。 そう。『違和感』だ。そうとしか言いようがない。 何がどういうと言ったことは説明できないしわからない。ただ。その存在に気がついた。 「…だいぶ冷えてきたな」 湖から上がり、足を拭いて身支度するとガウリイは言いながらあたしの頬に手をやる。確かめるように。慈しむように。 「大丈夫か?いくら暑いとは言え冷え性だろう、リナ」 彼の手はいつも温かい。同じ条件下にいたとしても。 「大丈夫」 続き等が気になる方は是非本のほうで。(ここが一番無難というのを踏まえて) |