「…ったく、数さえそろえりゃ最強と思ってるあたりがまだまだよねー」 言いながらちょっとした洞窟の奥深く深くへと入り込むあたし。この辺をたむろする盗賊団の存在を聞き、本日はストレス解消にやってきた。 俺達最強と洞窟の入り口近くの広い空間で大勢でどんちゃん騒ぎしているところを、あたしのちょっとした軽い呪文で先ほど駆逐した。最近の盗賊団にしては確かに大人数でいいもの着ていたようだけど、このリナ=インバースの相手になるはずがない。 かくして、これから後始末―――もとい。おたからの回収作業である。 「―――へえ、結構いいもんもってるじゃない♪」 おたからの隠しどころにたどり着き早速物色。 弱い明かりの光でもわかる質のよさそうな金銀宝石魔法の道具えとせとら。思わず出る声のトーンが上がる。 吹っ飛ばした中に魔道士か魔道に詳しいのがいたのか、わりと魔法の道具が目立った。 いくつか吟味して見定めていく中で、その中のひとつ―――片手のひらに乗り切るかといったくらいの大きな宝石の護符が目に留まった。 あたしはそれを拾い上げて、作り出した明かりの下食い入るように見る。 「んー…」 かなり複雑なみたことのない魔法陣が宝石の中に組み込まれていた。 加えてこの大きさ。作った魔道士はかなりの技術を持ってるとみて間違いなさそう。これはあたしが加工しなおしたりしなくてもこのままでかなり高い値で取り引きできそうである。掘り出し物。 「売る前にちょっとこの魔法陣調べて研究する価値あるかも…」 言ってもう少し明るい状態で見たくて、明かりとその宝石の護符を思わず更に近づける。 好奇心がむくむくと働いた。調べようとした。―――その時。 ばしゅっ!! 「!」 突然その宝石の護符が中の魔法陣を核として目映い赤い光を放った。刹那その光をもろに浴びるあたし。 しまった罠かっ!? すぐさま手離し身構えるが―――その光はすぐにおさまり、その光を放った宝石の護符は何事もなく、薄暗い洞窟の風景に転がりとけこんだ。 「……?」 すぐに確認に自分の手をみてわきわきと動かしてみる。特に問題はない。 足も特に問題ない。もちろんだからと言って安心はできないのだが――― 一体、と思った瞬間あたしは絶句した。 いや―――正確には絶句していた、と言うのが正しい。 「……!」 声が―――出ない。 喉に痛みはない。息ができないわけではない。言葉が思いつかないわけでもない。 ただただ声が喉から全く出てこない。出そうとしてもただ荒い呼吸になるのみ。 ―――声を奪われた。 愕然としてあたしは、地面に転がった先ほどの宝石の護符を――ただ見つめた。 ◇◇◆◆ 「いつかこういうことがあるんじゃないかって思ったんだ」 呆れ半分怒り半分の声色を乗せて、ガウリイが白身魚のソテーを食べながら説教するのをあたしは黙って聞いていた。 いや、黙って、というか喋れないんだけど。 ―――声を失ったということで、すぐに宿に戻り、ガウリイを起こして真夜中にも関わらず魔法医のところに行った。 しかし―――元には戻らず。 こうなった要である護符をどうにかするか、それを作った人間に訊うしかないのではないか―――そんなことを言われて帰されてしまった。 で、翌日。 あたしとガウリイの二人は、とりあえず朝食を食べ、今後について話し合うことになった。話し合うと言ってももちろん、あたしは喋れないわけだからこちらは筆談。傍らに羊皮紙とインクを含んだペンを用意してある。 が。 「大体最近のお前さん盗賊いじめ多すぎるだろう。むやみに行くからこういうことに」 「……」 ガウリイの説教が延々と続いているのである。いつもなら口先三寸で言い返し話題を変えるところなのだが―――正直筆談だとめんどい。めちゃくちゃめんどい。書いてる間食べる手を止めなきゃなんないし。 そんなわけでとりあえず食べるのを優先していろいろ言いたいのをぐっとごまかす。 ―――盗賊いぢめが増えたのは誰のせいだと思ってんのよ。 続き等が気になる方は是非本のほうで。 |