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―――彼は初めての地を訪れると、町並みと同じくらい、いやもしかしたらそれ以上に空を見る。 その事に気づいたのは一緒に旅をしてからかなり後のこと。 あたしの郷里であるゼフィーリアに訪れたときの事である。 「ほら。見えてきたわよ。ゼフィール・シティ」 前を歩き案内するあたし。郷里だけあって近づけば自然と足取りが軽く、速くなった。 ずっと木々で辺りが覆われていた街道の景色が開ける。 少しだけ高台になっていたそこからは町が一望できた。 ―――久しぶりの、見慣れた風景。 「へえ。ここかあ」 嬉しそうに後ろであたしの旅の連れのガウリイは言う。 あたしは後ろを肩越しにちらりと見た。 そういう彼の見ている方向は、確かに町並みを見ていたけれど、すぐに、もっと高い位置に目線がいったのをあたしは気づいた。 前を向きなおしてあたしも目線だけその彼の見る先へとやる。 青空。 雲のほとんどないその空は濃い青色。 あたしが見慣れた空だ。 小さいときから見慣れた色。ゼフィーリアは、冬は雪がそこそこ降る関係で白い空だけれどそれ以外の晴れた日はいつもこの色の空。 突然景色が開けたのだから空を見るのは当然といえば当然かもしれない。 けれど、その空を見るガウリイの、少し嬉しそうな表情がなんとなく印象に残った。 その時の、見慣れたはずの空も。 「あたしの実家までは、もうちょっとだから。行くわよ」 けれどその時のあたしは特にその事に何を言うわけでもなく、ただ久しぶりの里帰りに思いをはせ、なんてことなくその空の下を彼を先導しながら歩いたのだった。 本文・エピローグSSが気になる方は是非本のほうで。 |