20 Topic for Slayers secondary creations 
-スレイヤーズ2次創作のための20のお題-

15.残り時間


「自分があと、どれくらい生きていられるだろうって考えたことある?」

 

 

丘の上であたしは辺りを見下ろしながら、隣の彼の方は見ずに言う。

気持ちいい風がさやさやとそよぐ。

 

小さな村だけれど周辺を見渡せる丘があり、それがあまり知られていない割には絶景で一度は見る価値があると、この近くの町で教わってきたのだった。

旅の連れであるゼルは最初乗り気でなかったけれど、あたしが行ってみたいと駄々をこねるとついて来てくれた。

噂通り。ちょっと登るには骨が要ったけど、その分だけ高い丘からは呪文で空を飛んだときに見る景色とはまた違った風景が見られた。

小さな村ばかりぽつぽつとある地方だから夜景は残念ながら期待できそうもないけれど、その分、今の時間の山とか自然が作り出した部分がとても素敵だった。

天気もいいし。

 

そんな景色を見ていて、風に吹かれていてふとゼルに訊いた。

何気ないように発した言葉。でも実はあたしの中には前から眠っていたことば。

眠らせていたのは、単に言うきっかけがなかったからだった。

 

「……どうした急に」

「別に?ただこの見える風景の中にどれだけの人が生きてるんだろう、と思ったら。なんとなく」

少しだけ笑って、軽い口調で、突然言い出したからか怪しむ様子のゼルに答える。

 

小さい子、たった今生まれたばかりの子供もいるかもしれない。

逆に、今この瞬間に亡くなってしまった人もいるかもしれない。

あたしが見てないところで世界は動いてる。

だから旅をして色々見つけていくのが楽しい。

彼からしたら、そんなんじゃなくて明確に目的のある旅だからそんな余裕はないのだろうけれど。

 

「あたしは、時々考えるの。どれだけこうしていられるだろう、って」

 

どれだけ生きていられるんだろう。

そう考えてしまうのはきっとあたしがコピーだから。

リナ=インバースと言う人間のコピー。

 

当時18・9のリナがオリジナルでよかった、と思う。

だってあたしには子供時代がない。

生まれたときから、リナと同じ18・9の歳に体が成長した状態で始まったのだから。

あたしのオリジナルが、70を過ぎた老婆、とかだったらどうだったろうとかふと考えたことがあった。

未来に向かえただろうか。

何かすることの楽しさ。

生きることの楽しさ。

それを感じることが出来た?

普通に生まれてその歳になったとしても、その後何年生きられるかわからない位の年齢から始めて。

途中から始めた、始まったところが遅ければ遅いほど、きっとそれは難しいのだと思える。

――――長く感じることを。

だから思う。

――――あとどれくらい、生きていられる?

 

 

「……確かに、考えたことが、ないと言ったら嘘になるな」

そうゼルが答え、あたしは少しだけ驚いて彼の方を向く。

肯定される返事が返って来るとはあまり思ってなかったのだ。

彼はあたしを見つめていた。

 

「きっと誰でも考えることだ。自分に残された時間はどれだけなんだろう、と。生きているうちに一回は。

正直俺は、この体のままでは長生きはできないだろうな、と思ったことも少なくない」

苦笑して自分の手を見ながら彼が言い、あたしは内心、あ、と声を上げた。

 

彼の体―――合成獣となっているその姿。

年齢による体の衰えは早いんだろうか。遅いんだろうか。

……無理矢理に合成された、ということを考えたら前者のが可能性はある。

外部からの攻撃や傷には耐えられるだけのものはあるだろうけれど、それは体の中身の老化や負担とは別のものだろう。

コピー・ホムンクルスの寿命が長いか短いかは実際のところあたしは知らない。

未だ研究されていないと言う話だけれど、極端に短いと言うわけでもなさそうでその手の書物を読んだ時あたしは少しだけほっとした。

けれどゼルの場合そんなあたしよりも、気付かなかったけれど不確定な要素が多く不安要素が強いのかもしれない。

この体の、ままでは。

 

「大丈夫、ゼルは」

「レナ?」

「その為に旅してるんだもの。ゼルの残り時間を元々あったものに戻して延ばすの」

決意を込めてまっすぐに彼を見て言うあたし。

 

彼にはこのままでは不安な要素が強い。けれども。

それを防ぐチャンスがきっとある。

望んだものになれる可能性。

未来。

ゼルにはそれを手に入れて欲しい。

あたしが手に入らないもの。入らない分だけ。それ以上でもいい。

 

そう言うお前もだ、とゼルは少しだけ低めの声で言いながら、近づいてあたしのなびく髪に触れる。

風で自然とゼルの手にあたしの髪は絡まる。

「あのリナと同じだけのものを持ってるんだから、あいつと同じ位のしぶとさはある。

後は自分の力で、残り時間を延ばしていくだけだ」

「………」

 

あたしの質問の意図をさすがに読み取っていたらしい。そうじゃなきゃ自分も、なんて言わなかっただろうけど。

あたしは普通に残り時間を与えられているのか。彼と違いどうしたって防げない、生まれた時から悩んでも答えのない疑問。

けれど次の言葉がその言葉よりも、察知してくれたことよりも何よりも、あたしは嬉しくて泣きたくなった。

 

「実際どれだけ生きてられるかは俺もお前も他の人間だってわからない。

が、残り時間が充分なうちに俺は元の姿に必ず戻ってやるし、その隣にはお前が残り時間が同じく充分な状態なままで居る。その為に旅をする。

どうせ決意するならここまで決意しろ」

そう言って絡まった髪を離す。後半は少しだけ怒った声。でもけしてきつさはない。

「……うん」

頷いて目を閉じて。うつむいたままあたしは彼の胸に少しだけ寄りかかった。

 

 

不確定を可能性に変えて生きていけたなら、と決意をもう一度した。