Continuous cropping series story-連作・シリーズもの-

片恋反応



 

 

―――ある日。ガウリイに思い余って告白した。

そしたら自分もだ、と言われた。

予想外の展開。

予想外ゆえに、そしてあたし達の身の安全のためにも――あたしはコイビトになることを拒んだ。

ただ一緒にいたいだけ。関係を変えたくて言ったわけじゃない。ただの自己確認。

それになによりあっさり自分もと返されたのに信用できなかったのもある。何にも考えてないだろう、と。

 

かくしてあたし達は、一応お互いの気持ちは聞いたけどそれをあえて通わせない、いわゆる片思い同士とゆーことになった。

だから言ったのちも特に何も変わらない。今まで通りである。

…いや。前言撤回。ちょっと変わった。

 

「……」

ふと引っ張られた感覚がありあたしは自分のマントの端を見る。

ほんのかすかだけ。少しだけ、ガウリイがあたしのマントの端をつかんでいた。最近よくあること。

「……」

どうしていいやらため息をつくあたし。

 

なんなんだろう、と最初思った。思ったし、訊いた。けれど彼は困った表情で曖昧に誤魔化す。

―――そんな中少し経ってそれは、彼の中で手をつなぐ代わりにしているのだとあたしは気づいた。つかむ位置やシチュエーションとか、彼のそういう時の表情とかで察する。

あたしに近づきたがってる。触りたがってる。それを我慢している。

けれどお互いの片思いを推奨している関係上それを自分の口では言わない。

 

……すんごいわかりづらいけどあからさまな変化。

手くらいなら保護者と被保護者でも繋ぐこともないわけでないとゆーのに。子供かというくらい初歩的なことでおろおろするようになった。

子供が親に愛されたくて顔色伺うみたいに彼はあたしの顔色を見る。遠まわしに、これならと言うようにマントだけ握る。その姿に、本気であの時あたしへの感情を返したんだなあこの男、と思う。思い付きみたいに見えたけど。

 

いつからだろう、と思う。あたし自身も曖昧だけどあたしが彼への気持ちを自覚した時と違って、彼からしたらそう大きな事件はなかったような気もするのだけど。

 

その優しさがうれしくもあり、若干の罪悪感というか後悔を心の奥につもらせる。

立場上、あたしはそんな彼に応えない。何よ、とまでは訊くけれどどうしてこうするのか深くは訊かない。

――――――けれどその手を突き放すこともできない。

 

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「……」

そしてそれから少したった後のある日あるとき。いつもより強くマントをつかまれた。

しっかりマントを握る彼にあたしは驚きつつも―――笑いつつもあきれた。

 

さきほど、魔族の襲撃にあったのだ。あたしとガウリイは別々に分断されそれぞれ戦った。といってもお互い一人じゃなかったけど。

あたしと一緒に戦ったミリーナは、戦いを終えるとガウリイと一緒に戦ってた自分の旅の連れに心配のあまり抱きしめられていた。

それに対して、やっぱり無事だったかーとあたしになんてことなく言ったガウリイ。

いやもう少し心配しろよと内心突っ込んだのだけど―――どーやら表向き、だったようである。彼らがいたから制御したのか。抱きしめていい立場にないからか。両方か。

いつもの表情、いつもの声。態度はほか変わらないのに、ただ一箇所、あたしのマントをこっそりつかむ手だけがいつもより強い。引っ張りすぎ。

 

あたしは苦笑う。

それに不思議そうな表情をする彼。

 

……そこまで気を使わずに、いっそのこと『思わず』触れてくれてもいいのに、なんて思ってしまうあたしがいて困る。自分を速攻制する。 

これを望んだのはあたしなのに。

 

無視するには無理があるので仕方なくあたしも逆に彼の服のはしをひっぱる。マントが彼にはないから仕方なく服。

ため息ついて上目遣いで睨んで言う。

「……こどもじゃあるまいし。つかまなくてもいなくなんないから。変わんないから」

 

あたしのことばに困ったように微笑む彼。

泣きそうにも見えてなんだか逆に抱きしめたいようなそんな気分になり、再度あたしは自分を制した。