Short Story(not SFC)-短い話-
Glow field is a field
―――どこまでも、歩いていける気がしていた。それまでは――――
「火炎球っ!」
ずどぉん。
あたしの放った攻撃呪文の花が見事に盗賊達の根城で咲く。
突然のことに訳もわからず逃げ惑う盗賊さんたち。
やっぱり盗賊いぢめは人間として生きる上での義務であるっ。
「さてと、おたからおたから♪」
あたしはわざと明るい声を出しながらおたからがあると思われるところにいく。
思ったより多い宝の数々。
あたしはそれらに感動しながら一つ一つザックにしまいこむ。
――――盗賊いぢめをしている時だけだ。
こうやって今のあたしが笑えるのは――――。
「リナ」
びくん。
あたしは―――おそるおそる後ろを肩越しに振り向いた。
「あー……アメリア。なんだびっくりした」
声で―――予想はついていた。
けれども。
期待した。あたしは。
―――――何を?
「なんだ、じゃあないわよ」
いつもよりアメリアの声が固い。
いつもなら『わたしも一緒に悪を退治するわっ!』とか目を輝かして言うのだが…。
もしかして自分を置いて盗賊いぢめに行った事に怒っているとか?
――――いや。
違う。
きっと彼女が笑っていない理由は――――
「盗賊を倒さないと路銀ができないのはわかってるわ。
そして、あなたのストレスを解消するにはこれが一番だ、ってことも。
けれども―――ラーシャートがあなたの命を狙っている今、一人で行動するのは危険過ぎる。
リナ、あなただって、わかっているでしょう?」
そう、今あたしは魔族ラーシャートに命を狙われている。
そして。
冥王に連れ去られたガウリイを助けるために―――サイラーグへと向かう旅の最中だ。
「わかっているんだけどね」
あたしは肩をすくめて宝のほうに目線を戻し、宝を拾う。
「じゃあどうして。そんなに路銀が無いとでも言うの?ここのところ毎日盗賊倒しに出掛けている。
わたしやゼルガディスさんが―――気づいてないとでも思った?」
―――――。
「さっき声をかけた時のあなたの反応―――
ねえ、リナ、あなたもしかして―――」
「そんなわけないでしょ!?」
何もアメリアは言ってないのに。
思わず反論してしまった。
自分らしくも無い。
わかってる。
けれども。
「いくらあたしだって、ガウリイが捕まっている事位わかってるわよ。
こんなことしたって、ガウリイが駆けつけてこない事も」
嘘だ。
どこかで認めたくなかった。
どこかで嘘にしてしまいたかった。
盗賊いぢめをしていると楽しい。
だからあたしはストレス解消のためにやっている。
けれども今のあたしは。
どこかで期待したくて―――それをしている。
彼がかなりの割合で駆けつけることを知っているから。
ありえないのに、今の状況では―――
気づいてる。
けれども―――認めたくない。
それに盗賊いぢめをしなかったら、夜を持て余してしまう。
眠れない。
あの日から。
眠れば泣いて目が覚める。
寒い。
彼が隣にいないことが。
とても寒くて。
歩けなくなりそうになる―――あたしともあろうが。
気づかなければ、平気だったのに。
今まで彼とはぐれていても平気だったのに。
どうして今更あたしは気づいてしまったのだろう。
―――――彼への、想いに。
あたしは必死に表情に出さない様にして、アメリアを見た。
アメリアはため息をついて言った。
「ねえリナ。もう一人で出掛けるのはやめて。
盗賊倒したいなら、わたしも付き合うから。
―――――眠れないなら、付き合うから」
「……っ」
何もかも解っている様に。
アメリアにそう言われあたしは黙り込んだ。
何も言えなかった。
―――仲間のありがたさと。
自分を見透かされる事のとまどい。
二つを抱えて。
―――でもあたしはだからと言って甘えることができない。
性分なのかもしれない。
「……仕方ないわねー、そこまで言うなら帰りましょ」
いつもの調子で―――あたしは言って見せた。
少し微笑んで。
宝をしまいこみ。
するとアメリアが寂しげに――笑みを返した。
―――アメリアにそう言われてから。
あたしはそれまでよりは。サイラーグにつくまで。
少しだけ―――――、一人でいたとしても眠れるようになった。