20 Topic for Slayers secondary creations 
-スレイヤーズ2次創作のための20のお題-

01.古い宿




「ったく……宿のおっちゃんに文句言ってこなきゃっ」

ぶちぶちと愚痴をこぼしながら荷物をまとめて自分の部屋を出るとゼルが同じ様に荷物を持って廊下にいた。

「ゼル。どーしたのよ?」

「部屋を移動してくれと宿の主人に言ったら部屋が空いてないって話なんでガウリイの部屋にやっかいになろうと思っててな。……そういうあんたこそ」

あたしの持ってる荷物を目線で追って言う。

「あたしも部屋変えてもらうかなにかしてもらおうと思ってたんだけど……じゃああんたも?」

「ああ」

ゼルがうんざりしたように窓の外を見る。

激しい音をたてている雨。

「雨漏りがひどくてな」

 



ざー…としばしの沈黙の中雨の音だけが耳に響く。

 

「あー……雨漏りね。そうっ、雨漏り。すんごいわよねー、いくら宿が古いからって」

あたしはしばし無言のあと、すぐさま話を合わせる。


……よかった。余計なこと言わなくて。

思わず浮かんだ汗は悟られないようにする。

よくよく考えると雨漏りと並べるとこっちはひとさまには笑い話にしか聞こえないだろーし。

つーかゼルはさておきアメリアやガウリイは笑う。絶対笑う。

代わりの部屋がないならこっちもアメリアの部屋にもぐりこむしかなさそーだし。まああとでこっそりと宿のおっちゃんには問い詰めに行くけど。

「床ならともかくベッドにまでじゃさすがにな。まあ俺達二人がこんなんじゃあガウリイのところもアメリアのところも怪しいもんだが」

「そーね」

ゼルがガウリイの部屋をノックするとガウリイがすぐ顔を出す。

なんとなく気になってあたしもアメリアの部屋を訪ねる前にガウリイの部屋を見ておこう、とまだドアを叩かない。

 

「どーした?2人揃って荷物持って。今日泊まらずにもう出発なのか?」

「んなわけないでしょこの雨で。あたし達二人とも部屋が雨漏りひどくてあんたやアメリアのとこにもぐりこもうってことで来たのよ」

さりげなく同じと言うことにしといた。

「で、あんたのところはどうなんだ、雨漏りは」

「こっちはないな。特に問題ないみたいだけど……でもベッドが1つしかないぞ?」

「構わん。床に毛布ひいて寝る。それが出来ないくらい俺の部屋はすごい。水浸し同然だ」

そんなにひどいんかい。

ガウリイも眉をひそめる。

「………よく貸そうとするなここの親父さん。そんな部屋」

「多分余ってる部屋今日他にないみたいだから無理矢理ごまかそーとしたんでしょーね。

あとできちんと宿代返してもらえるよう請求するけど」

「で?アメリアの部屋は?」

言われてあたしはドアをたたくと、はーいとアメリアが部屋の鍵をあける。

 

「あら、みんなお揃い。どうしたんです?」

「アメリア、あんたんとこ泊めてもらえる?あたしもゼルも雨漏りひどくて部屋使ってられないのよ」

「いいけど、ゼルガディスさんまではさすがに泊められないわよ?」

「俺はもちろんガウリイの所に泊まる。そう言う言い方をするってことはアメリアの部屋も無事か。

俺達が運が悪かったってことだな」

ため息混じりに言うゼル。

「ねーねー、その部屋見せてもらえる?わたし、雨漏りって見たことなくて」

………いきなりな事を満面の笑みで言うアメリア。

「ないのか?雨漏り」

「だってお城はマメに父さんがそんなことないようにチェックして直してるし」

フィ…フィルさん……なんかすっごくその光景似合うんですけど……。

つーか普通王族はやらんだろ。ンなこと。誰かに頼めよ。

「見たければ勝手に見ろ。すごいことになってるぞ。最初は雨も小ぶりだったから気のせいでもすんだが」

呆れたようにゼルが言う。

「わーい、じゃあ早速ゼルガディスさんのところとリナのところ見せてもらうわね♪」

本気で嬉しそうにそう言って廊下に出てくる。

ちょっと待て。

 

「いや、あたしんとこはそんなに大した事ないから、ゼルのとこだけでいいんじゃない?」

思わずすぐに止めに入る。

マヅイ。

「え?どうして?」

「そんなにひどくないなら部屋そのまま使えるんじゃないか?」

いらんことを言うガウリイ。

「とっ…とにかく。ゼルの方を見てみましょ。その話ではすごそうだし」

方向転換になってない話題であたしは誤魔化した。

 

ゼルのところはほんとにすごかった。

 

ぼたぼたぼたぼたぼた。

ベッド・床と数え切れないほどの雨漏りに既に室内で雨となっている。

一番端の部屋でいかにも使ってませんでした物置でしたみたいな雰囲気は漂ってるのだけれど、これはいくらなんでもあんまりである。

「うわーすごい。こんな風になるのねー」

感心するアメリアに、後ろで興味があってついてきたガウリイも、おーおーと声を上げている。

あたしもさすがにここまでとは思ってなかったけど。

つーか本当にこんな部屋貸すな。いくらなくても。

 

「じゃー次はリナのところねv」

「だっ…!だからあたしんとこはいいじゃないって言ってるじゃないのよっ」

慌ててあたしの部屋の前に行くアメリアを再度とめる。

「リナ、なんでそんなに嫌がってんだ?」

「べ、別に嫌がってなんかないけど?」

この男はどーしてこーゆー時だけ鋭いんだ。

 

「霊縛符。」


ぴしい!


あたしの身体がいきなし動かなくなる。

やったのは言わずもがな。

「ア〜メ〜リ〜ア〜」

睨み付けるあたしに、アメリアは悲痛な顔で、少し目をうるませて、

「リナ…何か隠しているでしょう。隠すのは正義じゃないわよ。…そしてそれを知るのが正義なの。許してっ」

そりゃ単なる好奇心だああああっ!

じたばた動かない体をしている間にアメリアとガウリイはあたしの部屋だった場所を開けた。

 

「なーんだ、雨漏りなんてな……」

部屋に入ったアメリアの声が途切れる。

どうした?とガウリイも後から入り、なんだこりゃ、と言う声。

 

えーえ、雨漏りはないですよ。雨漏りは。

 

部屋から出たアメリアは戸惑ったようにあたしを見て言う。

「リナ……なんでベッドが真っ二つになってるの?」

「床に穴もあいてるんだが……」

うっ………。

 

ざー…とまた雨の音だけが。

 

そんな中黙ってゼルがあたしの部屋の中に入っていく。

どんどん、とこぶしや足で床を調べる音。

無言で出てきてあたしのところへ。

 

「……お前の体重で抜けたのか。あの床」

ぴしい。

術のせいだけでなくびしばし固まるあたしにゼルは更に続ける。

「呪文のあとはない。……確かにまあ100歩譲ってベッドの方は足がそこそこ弱っていたようだから別にありえなくはないとしておこう。

しかしそれを踏まえたとしても床は俺が普通に乗ってもぎしぎし言うだけで平気な状態だぞ。

…が、あの大きさだとお前自身が重さであけた穴としか思えない」

しれっと言うゼルガディス。その横でああ、としみじみとガウリイとアメリアが納得する。

 

「いくら床が弱ってても、ゼルガディスさんが乗っても平気なところを……」

「最近よく食ってたもんなあ。宿のせいじゃないんじゃないか?」

「でもさっき請求するって言ってましたよ」

「あれを雨漏りのせいにするつもりだったのか?それはちょっと……」

「そう言えば少し太ったなあとは思ってたんだけど」

「でも胸にはいってない……ぞ……」

あたしが動けるようになったことに気付いて、ガウリイは言葉を止めた。

 

「あーんーたーら……動けないのをいいことによくもまあいろいろ…」

ゆらり、とあたしは呪文を唱える。

3人が恐怖の顔で慌てて後ずさりしたもののもぉ遅い。

おにょれっ、笑うよりはっきし言ってタチ悪いっ!



――――そのあと。

何故かその宿が半壊し、あたし達は結局雨に濡れたことだけを述べておく。

ちなみにそれのせいで宿代の返金も請求できなかった。

めでたくなしめでたくなし。

しくしくしくしく。